登録支援機関
登録支援機関に分野の壁はない|介護の現場から全分野へ
「介護に強い機関だというのはわかりました。ただ、うちは建設なので、対象外ですよね」
——お問い合わせの電話で、こう前置きされることがあります。ご丁寧に、こちらが断る手間を省いてくださっているのだと思います。
ですが、この前提は制度上、正確ではありません。登録支援機関の登録に、分野の区分はありません。 私たちは、いま受け入れができる16分野のすべてでご相談を承っています。
制度の条文と、私たちが実際にやっていることの両方から、順にご説明します。
登録支援機関の登録は、分野で分かれていない
出入国在留管理庁が公表している登録支援機関の登録基準は、大きく2つだけです。
- 機関自体が適切であること(法令等を遵守し、禁錮以上の刑に処せられた者などの欠格事由に該当しないこと)
- 支援体制があること(外国人が理解できる言語で支援できること、支援計画の全部を実施できること)
ここに「どの分野を支援するか」という項目はありません。登録の申請時に分野を選ぶ仕組みも、分野ごとに登録が分かれる仕組みもないのです。同庁は「支援計画の全部を実施できる必要があり、支援の一部のみを行うものとして登録を受けることはできません」と明記していますが、これは支援の“範囲”の話であって、産業分野の話ではありません。
裏づけはもうひとつあります。登録支援機関登録簿には、「対応分野」という列そのものが存在しません。
登録簿は入管庁が公開しており、2026年8月3日現在で11,537件が掲載されています。実際のファイルを開いて確認しましたが、載っているのは登録番号・名称・所在地・支援を行う事務所などで、分野を示す欄はありません。制度が分野で区切っていないから、記録する欄も存在しないのです。
つまり「介護の登録支援機関」「建設の登録支援機関」という制度上の区分は、そもそも存在しません。それは各社が自社の得意分野を説明するために使っている言葉です。
義務的支援10類型は、分野が変わっても変わらない
登録支援機関が引き受ける義務的支援は、法令上10の類型に定められています(基準省令3条1項1号 イ〜ヌ)。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 非自発的離職時の転職支援
- 定期的な面談・行政機関への通報
この10類型のどこにも「介護の」「建設の」という限定はありません。 住居を探すことも、市役所へ同行することも、月に一度きちんと面談を行うことも、その人がどの分野で働いていても同じように必要です。銀行口座の開設に付き添う仕事に、業種の違いはありません。
支援の中身が分野で変わるわけではない。変わるのは、受け入れる企業側に課される要件のほうです。
では、分野で本当に変わるのは何か
分野ごとに違うのは、主に次の4つです。ここは受入企業(=御社)の側の話になります。
| 変わるもの | 中身 |
|---|---|
| 技能試験 | 分野ごとに別の試験。技能実習2号を良好に修了した場合の免除の範囲も分野で異なる |
| 業務の範囲 | 何を任せられるかは分野別運用方針で細かく定められている |
| 協議会への加入 | 分野ごとの協議会に、受入企業が加入する。介護分野では「特定技能所属機関は協議会の構成員になること」と明記されている |
| 分野固有の上乗せ要件 | 分野によっては、受入企業や登録支援機関に追加の基準がかかる |
4つめについては、正直に申し上げておくべきことがあります。分野によっては、登録支援機関の側にも固有の基準がかかる場合があります。
たとえば漁業分野の運用方針には、「漁業分野の1号特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関が登録支援機関に支援計画の全部又は一部の実施を委託するに当たっては、漁業分野に固有の基準に適合している登録支援機関に限る」と定められています。ですから「登録さえあればどの分野でも無条件」と言い切るのは、正確ではありません。
ご相談をいただいた時点で、その分野に上乗せの要件があるかを一緒に確認します。確認せずに「できます」と請け合うことはしません。 分野の壁がないことと、分野ごとの段取りが同じであることは、別の話です。
それでも、介護の現場を持っていることが効く理由
ここまでは「制度上できる」という話でした。事業者の方が本当に知りたいのは、任せて大丈夫かどうかのほうだと思います。
私たちの母体である株式会社大将は、グループホーム・デイサービス・居宅介護支援を自ら運営しています。人手が足りない現場で実際に何が起きるか、どんな人財が続き、どんなときに辞めていくのかを、事業者として見てきました。この経験のどこが、分野を越えて効くのか。3つあります。
① 日本語の要求水準が、制度上いちばん厚い分野で鍛えられた
介護分野は、日本語の試験が2つ課される分野です。「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に加えて、介護日本語評価試験の合格が求められます(介護職種の技能実習2号を良好に修了した場合は免除)。他の分野が前者だけであるのに対し、介護には介護の言葉の試験が上乗せされている。
一方で、登録支援機関に法令上求められているのは「日本語学習の機会の提供」までであり、N3合格などの到達水準を求める規定はありません。 つまり、機会を渡すだけで法令は満たせてしまう。
私たちがその最低ラインの上で伴走を続けているのは、介護の現場で「日常会話はできるのに、ヒヤリハットが書けない」という壁を実際に見てきたからです。学習アプリ「Japany」による毎日の学習、月1回の模擬試験と得点推移の管理、グループLINEに届く学習報告への当日中の返答、遅れている人への個別の声かけ。この設計は、記録と申し送りの日本語が命綱になる分野で作りました。ただし、これで試験の合格や在留資格の変更を保証するものではありません。
そして、書く日本語・報告する日本語が要らない仕事は、どの分野にもありません。
② 生活の支援が、定着の分かれ目になることを知っている
介護は夜勤があり、生活のリズムが不規則になりやすい仕事です。だからこそ、仕事以外の時間に何が起きると人が折れるのかを、身をもって見てきました。住まいのこと、体調のこと、家族への送金のこと、宗教上の習慣のこと。
これらは10類型でいえば「生活オリエンテーション」「相談・苦情への対応」「定期的な面談」に当たり、分野を問わず必要な支援です。仕事の中身は変わっても、慣れない国で暮らすことの難しさは変わりません。
③ 受け入れる側の不安が、実感としてわかる
私たちは支援する側であると同時に、自分たちも受け入れる側でした。既存の職員が何を不安に思うか、最初の3か月に何が起きるか、誰が現場で板挟みになるか。これは制度の解説書には書かれていないことです。
受け入れの主体は、あくまで御社です。私たちの仕事は、その御社の判断材料と段取りを整えることにあります。
現場では ── 分野をまたぐときに、最初に確かめること
これから受け入れをご検討の事業者様には、次の順で確かめることをおすすめしています。
- 御社の仕事が、どの分野のどの業務区分にあたるか。 ここが決まらないと試験も要件も決まりません。似た作業でも分野が分かれることがあります
- その分野の協議会と、加入の手続き。 加入するのは受入企業です。分野によって窓口も時期も違います
- その分野に、登録支援機関側の上乗せ要件があるか。 漁業分野のような固有の基準がないかを、委託の前に確認します
「受け入れができる分野」と「その分野で自社が受け入れられるか」は別の問いです。1つめの整理だけでも、受け入れ可能な職種の一覧でおおよその見当はつきます。
まとめ
登録支援機関の登録に分野の区分はなく、義務的支援10類型も分野で変わりません。変わるのは、試験・業務範囲・協議会・分野固有の上乗せ要件という、主に受入企業側の要件のほうです。
そのうえで、私たちが介護から始まったことには意味があります。日本語の要求がいちばん厚く、生活の支援が定着を左右する分野で、支援の型を作ってきたからです。 その型は、分野が変わっても持ち運べます。
いま受け入れができる16分野と、2027年度に加わる予定の3分野は受け入れ可能な職種にまとめました。委託先を比較しておられる段階なら登録支援機関の選び方を、制度の全体像からということでしたら特定技能制度とはをご覧ください。私たちの支援の範囲は受入支援、学習の伴走は日本語学習の伴走に記載しています。
「うちの分野は対象外だろう」と思われていた方こそ、一度受け入れのご相談からお声がけください。まず、御社の仕事がどの分野にあたるかの整理からご一緒します。
※本記事は公表資料をもとにした一般的な目安であり、個別の案件の可否を判断するものではありません。制度は改正されることがあります。最新かつ正確な内容は出入国在留管理庁および各分野の所管省庁の公式情報でご確認ください。

